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森の思考|vol.2 わたしという小さな生態系

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森の思考|vol.2 わたしという小さな生態系

森の思考|vol.2 わたしという小さな生態系

2025/05/16

呼吸が浅いとき、頭の中はせわしなくなり、
言葉はとがり、誰かとの距離もうまくつかめなくなる。
 

そんな自分に気づいたとき、ぼくはようやく「戻る」感覚を思い出す。
“整える”というより、“めぐりを感じなおす”ような感覚。

それは、身体のどこかが
「今、うまく流れていないよ」
と教えてくれているサインかもしれない。

 

ぼくらはつい、「わたし=考えている自分」だと思いがちだけど、
ほんとうはもっと複雑で、広がりのある存在なんだと思う。
 

呼吸のリズム、腸内の菌たち、神経の状態、ホルモンの変化、感覚の微細な揺らぎ。

そうしたものが日々、
静かに反応しながら“わたし”という生態系を形づくっている。

 

たとえば腸内には数兆もの菌たちが棲んでいて、
そのバランスが心の状態や思考パターンにも影響を与えている。

何を食べたいか、何に惹かれるか――
そうした“選択”の多くは、自分ひとりのものではなく、
身体の中の他者たちとの共生から生まれている。
 

神経系もまた、環境の中で絶えず反応している。
ポリヴェーガル理論では、
人の神経は「安全かどうか」を無意識にスキャンし続けていて、
その感覚が、表情や声のトーン、人との関係性にまで影響するという。
 

つまり、他者との関係性は、ただの心の問題ではなく、
神経と神経のあいだで起こる“共鳴”でもある。
 

この「共鳴」がうまくいかなくなるとき、
ぼくたちは“孤独”を感じるのかもしれない。
 

誰かがいないというよりも、
自分の中の“めぐり”が滞って、
呼吸や感情や声が、自分にも届かなくなってしまう感覚。

 

ぼく自身、そういう時間を経験してきた。
 

ふだんは朝早く起きて、
ヨガのアーサナをして、静かに座る時間をとっていた。

身体の感覚、呼吸のリズム、心臓の拍動――
そのひとつひとつに意識を向けることで、
「ああ、いまここにいていいんだな」「家は安全な場所なんだな」と思える。
身体と心がひとつに統合されていく、そんな感覚があった。

 

でも、2人目の子どもが生まれてから、
睡眠時間は減り、朝の時間も取れなくなった。

「仕事をしなきゃ」「責任を果たさなきゃ」と思うのに、時間はない。

そうして、気づけば身体の感覚より、
頭の思考ばかりが前に出るようになる。

効率的に、合理的に、計画的に……

その感覚で日々を過ごしていると、
自然のままに生きている子どもたちの振る舞いが、
どこか“予定通りでない”と感じられて、
苛立ちや、自分を責める気持ちが出てくる。
 

でも、そんなときこそ、ほんの5分でも10分でも、
自分の身体や心臓に意識を向ける時間をつくってみる。
 

子どもを「こうすべき」とコントロールするんじゃなく、
自然として、矛盾を含んだままの存在として受け入れる。
 

そうやって、自分のめぐりを感じ直すことで、
ようやく、ぼくは本来の自分に戻ってこれる。

そして、自分を大切にしながら、家族にもやさしくいられる。

生きるということは、ただ前に進むことじゃなくて、
わたしという生態系のめぐりを感じ直しながら、
いまこの瞬間を受け入れていくこと。

 

頭で「うまくやろう」とするよりも、
身体の中の“流れ”に耳を澄ますことで、また歩き出せることがある。

 

【今日の問い】
いま、わたしの中でどこが滞っていて、どこが流れようとしているだろう?

 

ー背景にある考え方(参考)ー
・腸と脳の相関(腸内フローラと情動)Mayer et al.(2011)Gut–brain communication
ポリヴェーガル理論 Stephen Porges(2007)The Polyvagal Perspective
・生態学的身体観 個体としての「私」ではなく、生態系的存在としての自己(L. Margulis:共生進化)

 


 


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