「セルフケアと収益の関係性:これからのビジネスに大切な視点」
2024/10/29
先日、あるセミナーで
「ビジネスで収益をつくることとセルフケア(メンタルケア)は、ビジネス価値にはつながらない」
と言われたとき、ぼくの心に大きな違和感が残りました。
ぼく自身、仕事を共にする仲間やクライアントが、
心や生活への配慮を大切にし、
セルフケアの重要性を実感していることを日々感じています。
だからこそ
「セルフケアが収益につながらない」
という意見には疑問を持ちます。
この考え方が根付いているのは、
近代産業の歴史に根ざしたビジネスモデルが影響しているのだと思います。
工業化以降、近代ビジネスは効率と利益を追求することを重視してきました。
この「機械的」なビジネスモデルでは、
個人の健康や心の状態がシステムの一部として扱われ、
全体の目標や数字が優先されることが多く、
セルフケアの重要性は軽視されがちでした。
それでは、幸福とは本当に収益や効率に頼るだけで成り立つものでしょうか?
心理学において、
幸福は「ヘドニア(快楽的幸福)」と「ユーダイモニア(自己実現的幸福)」
の2つの視点から語られます。
ヘドニアとは、一時的な快楽や満足感を得ることで感じる幸福であり、
高級な住居、豊かな食事、高度な教育など、
お金で手に入るものがもたらす「快適さ」と「享受」が中心です。
これは、一瞬の満足感や物質的な充足がもたらす幸せですが、
その持続性は限られており、やがてその満足感は薄れていくことが多いです。
一方、ユーダイモニア的幸福は、
自己の成長や自己実現を通じて生まれる持続的な充実感を意味します。
心理学者マーティン・セリグマンが提唱するポジティブ心理学では、
このユーダイモニア的幸福が、
人生に対する深い満足感や喜びをもたらし、
健康や人間関係にも良い影響を与えるとされています。
つまり、自己の本質に基づく自己表現やセルフケアを含む心の豊かさが、
ユーダイモニア的幸福をもたらすのです。
ビジネスの世界においても、
この「ヘドニア」と「ユーダイモニア」の違いが見て取れます。
収益を追求するあまり、自己を犠牲にするような働き方は、
ヘドニア的な成果としての「収益」をもたらすかもしれませんが、
それだけでは持続可能ではありません。
セルフケアによって心と体が整うことは、
ユーダイモニア的幸福を支え、関係性を豊かにし、
内なるエネルギーをもって自己実現を果たしていくための基盤となります。
ぼくは、これからのビジネスには
セルフケアが「利益にならない余分なもの」ではなく、
むしろ収益を支える根幹の一部として重要な役割を果たすべきだと考えています。
セルフケアを通じて自分の心と体が整うことで、
感性が磨かれ、関係性が深まり、事業が自然と成長していく。
つまり、セルフケアによってビジネスが新たな収益を生み出し続ける
「生命論的なサイクル」が生まれるのです。
あなたはビジネスで自分をケアしていますか?