「森の思考」vol.18|森の深呼吸──「あるがまま」を受け入れる時間
2025/06/19
日々の忙しさに追われていると、ぼくたちは時に、
自分がどこへ向かっているのか、
何を感じているのか、
さえも見失いがちです。
まるで、高速で走り続ける電車に乗っているように、
景色は流れていくけれど、
その一つ一つをじっくりと眺める余裕はない。
現代社会は、常に
「もっと速く」
「もっと多く」
「もっと完璧に」と、
ぼくたちを駆り立てるように感じられます。
事業をしていればなおのこと、
目標達成や売上といった数字、
あるいは「こうあるべき」という理想に囚われ、
立ち止まることさえ
許されないような気持ちになるかもしれません。
でも、森はいつも、
ぼくたちに教えてくれます。
嵐が来ればそれをそのまま受け入れ、
雨が降ればその恵みを享受し、
雪が積もれば静かに眠りにつく。
森の木々は、無理に成長を急ぐことはありません。
あるがままの自分と、あるがままの環境を受け入れ、
その中で、最も自然な形で生きている。
完璧を求める心のゆらぎ
ぼくたちは、事業や人生において、
常に「こうあるべき」という
理想の姿を追い求めてしまいがちです。
もちろん、目標を持つことは素晴らしいことです。
でも、その理想とのギャップに苦しんだり、
現状の「不完全さ」ばかりに
目がいってしまったりすることはないでしょうか。
例えば、新しいサービスを企画している時に、
「まだ完璧じゃないから発表できない」と、
スタートを躊躇してしまう。
あるいは、人間関係で悩んでいる時に、
「もっとこうすればよかった」と過去を悔やんだり、
相手に「こうあってほしい」と期待しすぎたりする。
こうした心境は、ぼくたちの感情を揺らし、
時に行動を鈍らせる原因になることがあります。
それは、まるで、澄んだ池の水面に、
小さな波紋が次々と広がり、
本来の姿が見えなくなってしまうような状態です。
「あるがまま」を受け入れる深呼吸
「森の思考」で大切にしているのは、
この水面の波紋を落ち着かせ、
池の底まで見通せるようになるような、
「あるがままを受け入れる」
視点です。
事業においても、人生においても、
まずは現状を、善悪の判断を挟まず、
ありのままに観察してみる時間を持つこと。
・今のぼくの事業は、どんな状態なのだろう?
・どんな感情を感じているのだろう?
・何がうまくいっていて、何が停滞しているのだろう?
・そして、どんな「つながり」の中に、ぼくはいるのだろう?
森が、日々の光や風、雨、土の状態を、
そのまま受け入れているように、
ぼくたちも、自分自身や事業の「今」を、
まずは否定せずに、ありのままに見てみる。
そうすることで、不思議なことに、
何を変えるべきか、
何を手放すべきか、
そして、何が本当に大切なのかが、
自ずと見えてくることがあります。
それは、無理に答えを探しに行くのではなく、
深呼吸をして、心の水面が静まるのを
待つような感覚です。
事業を支える「内なる土壌」のケア
先日、クライアントさんとのメンタリングで、
まさにこの「あるがままを受け入れる」
ための深いワークを行いました。
そのクライアントさんの
事業はスムーズに進んでいるのですが、
さらなる深化のために、
自身の内面を掘り下げたいというご希望があったのです。
ぼくは、森の持つ土の層とユング心理学を掛け合わせた
「自己の土壌モデル」というオリジナルのフレームワークを使います。
表層を「表在意識」
中層を「シャドウ・感情」
深層を「無意識」
そして最深層を「集合的無意識」と捉え、
それぞれの層にアプローチするワークです。
身体性のワークや瞑想、質問に答える時間、
人生の振り返り、そして感情と徹底的に向き合うこと。
そうした多様なアプローチを通して、
自分自身の「内なる土壌」をじっくりと耕していきます。
なぜ、事業のコンサルティングやコーチングにおいて、
こうした内面の掘り下げが必要だと考えているのか。
それは、特に個人事業主、
つまり「ひとり」で事業を育む場合、
その人の「人生でどう生きていくか」というあり方、
そして感性、その繊細さから生まれる強さといったものが、
事業にそのまま反映されるからです。
自分自身の内側と深くつながることで、
周囲とも豊かにつながっていくことができる。
ぼくは、そう信じています。
実際にワークを終えたクライアントさんからは、
こんな感想をいただきました。
「今までの感情やパターンは感じてはいたけれど、
より深いレベルで自分の考え方やあり方、
そして何かトラブルや困難に当たったときに、
どのように自分と向き合い、対処して良いかということが
わかるようになりました。」
この「あるがまま」を受け入れる時間が、
次の行動への力強い一歩となる土台を築いてくれる。
ぼくは、そう信じています。
【今日の問い】
あなたは今、自分自身や事業の「あるがまま」を、どんなふうに感じていますか?
【理論背景・参考文献】
マインドフルネス:
今この瞬間の体験に意図的に注意を向け、それを評価せずにただ観察する心の状態。
判断を手放し「あるがまま」を受け入れる実践として知られる。
アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT):
心理療法の一つで、不快な思考や感情を排除しようとするのではなく、「あるがまま」に受け入れ、それらと距離を置きながら、自分の価値に基づいた行動を促す。
システム思考:
個々の要素だけでなく、それらが相互にどのように影響し合っているか、全体としてどのように機能しているかを理解する枠組み。現状をありのままに把握することで、本質的な課題が見えてくる。
レジリエンス:
逆境や困難な状況に直面した際に、しなやかに適応し、回復する力。
現状を受け入れることは、レジリエンスを高める第一歩となる。
ユング心理学:
カール・グスタフ・ユングが提唱した分析心理学。
個人的無意識や集合的無意識、元型といった概念を通じて、人間の心の深層構造を探求する。


