森の思考| vol.4循環する営みを、取り戻す
2025/05/19
わたしたちが日常で「効率」を重視するとき、
それは往々にして“部分最適”になりやすい。
必要な工程だけを抜き出し、不要なものをそぎ落とし、時間と手間を削る。
確かに短期的には結果が出る。だがその営みを繰り返すうちに、どこかで“土壌”が痩せていく感覚が残る。
ぼくが暮らす畑でも、同じことが起こる。
季節を無視して種をまき、化学肥料で成長を促し、虫を殺して、人工的に受粉させる。
植物は育つかもしれない。でもそれは、次の季節を生む循環を奪う営みでもある。
栄養をもたらすはずだった土は痩せ、虫も菌もいなくなる。
同じ成果を出すには、また新しい資源とエネルギーを投入しなければならなくなる。
これは、事業でもまったく同じことが言えると実感している。
多くのビジネスモデルは、「売って終わり」の構造になっている。
講座を開く、商品を届ける、契約を結ぶ。
その後の関係性を前提としない限り、すべては一方向で終わる。
するとまた、次の販売やプロモーションが必要になる。
新たな“種”をまき、また注目を集め、また同じ工程を繰り返す。
この構造は、ある種の“枯渇”を内包している。
自然の循環は、それとは異なる。
分解、発酵、風化、共生、拡散……。
どれも人間の管理では生まれないが、
人が“手入れ”をすることで育まれていく営みだ。
落ち葉が土に還るまでに必要な時間、
倒木が微生物や虫の住処になるまでの静かな変化、
そのすべてが「回復」と「循環」をつくっていく。
自然は「放っておけば回る」わけではない。
関わりすぎても壊れるし、放置しても荒れる。
そこには、“ちょうどよい関係性”という知性が必要になる。
事業もまた、同じだ。
講座を届けることをゴールにせず、
関係性のなかで新たなプロセスが生まれるように設計する。
例えば、講座を受けた人が講師になる、
受講後のコミュニティが育っていく、
フィードバックから次の企画が生まれる。
これらは、営みそのものが回りはじめる“兆し”だ。
ぼくが大切にしているパーマカルチャーの世界では、
「堆肥(compost)」の存在が象徴的だ。
不要になったものを集め、分解し、時間をかけて土に還す。
そこに関わる菌や虫、温度や湿度の変化は、
人間の視点では“効率が悪い”かもしれない。
でも、そこから生まれた土は、命を支える力を持っている。
わたしたちの事業もまた、何を還し、どう土を育てるか。
その問いから循環が生まれる。
【今月の問い】
あなたの事業や関係性には、「還ってくる循環」がありますか?
それとも、使いきって消費されていく構造になっていませんか?
このテーマについて、より感覚的にnoteにも綴っています:
▶︎手放すことと、手入れすること─事業と自然の循環性
ー参考にした理論・視点ー
・パーマカルチャー:部分最適でなく、関係性を育てるデザイン(Bill Mollison)
・システム思考:自己強化型ループとバランス型ループ(ピーター・センゲ)
・成人発達理論:自己から他者、共同体、自然との関係性へと視座がひらく(ロバート・キーガン)
・リジェネラティブ・デザイン:自然の原理を基盤とした“生きたシステム”を育てる思考(Daniel Wahl)


